2017年06月13日
FBI SWATと陸軍の関わり
今回は法執行機関であるFBIのSWATと陸軍の繋がりについて話したいと思います。
内容的にはFBI SWATもHRT同様に、案外Military系装備の方たちとも合わせができるという話です。
LEとMilitaryが行動を共にしている姿は想像し難いと思いますが、FBI特殊の場合は比較的それが多いのが特徴のひとつです。
特にこうした話は、我々FBI装備側の人たちは知っていても、Military装備側の人たちは知らないことが多いので、この記事をきっかけに異装備間交流が深まれば嬉しいです。
FBIと陸軍は密接な関係にあると言えます。
その関係は非常に古く、特にSWATの上位部隊であるHRTの創設には、陸軍特殊部隊のデルタが関わっているのは有名な話です。
過去にはリビアのベンガジで起きた米領事館襲撃事件の首謀者を捕らえる共同作戦も行っているほか、現用の装備を見ても、HRTがデルタを参考にしているのがよくわかり、その繋がりの強さを感じさせられます。
(ニューヨーク脱獄事件 ―2015)
(デルタを意識したパッチなしの例もある ―2017)
一方でSWATは、HRTのように国外での軍事的共同作戦までは行いませんが、古くは1987年アトランタ刑務所で起きた、移民受刑者の国外追放決定に反発する暴動事件において、SWATもまたデルタと共同鎮圧作戦を行っています。
この事件においては、ルイジアナ州立刑務所でも同様の暴動事件が起きており、HRTがそちら側に対応していたため、しぶしぶSWATと協力をすることになりました。
SWATの場合は、最も協力関係にあるのは陸軍州兵や一般部隊です。特に州兵は軍の部隊とはいえ、国内での治安維持活動を行うという役割が似ていることから、訓練を共にする機会が多いです。
LEとMilitaryという根本的な違いから、相互に学べることが多いため、彼らとは定期的に合同訓練を行っており、その様子は2012年以降メディアに上がるようになってきました。
(アラスカの陸軍トレーニング施設にて ―2014)
画像はFBI SWATが2014年に、寒冷地域での本格的な訓練を初めて行ったときの様子です。
あえてMilitaryの世界に当てはめるなら、SWATはポジションとも言えるかもしれませんが、陸軍(州兵)との協力関係が強い理由は、単に立ち位置が似ているからだけでないことを示している内容と言えます。
本来の仕事はやはり捜査であるFBIにとって、SWATチームの仕事は重要とはいえ、FBI全体として見れば優先度は低いです。SWATが出動しなくて済むようにするのが仕事とも言えますからね。
そのためSWAT専用の訓練施設というのが少なく、通常の訓練はもちろん、専門的な内容の訓練を行うにも、各地に訓練施設を持つ陸軍を頼るしかないのです。
(州兵の訓練施設にて ―2017)
(陸軍のUH-60に乗るFBI SWAT ―2012)
また、FBIではハンヴィーをはじめとした、通常軍用に用いられる車輌が数多くあります。
最近ではMRZR4なんかも採用し、HRTがデルタに影響を受けているように、SWATもまた陸軍に大きな影響を受けているのです。
SWATの借り物で面白いものは、最近はそういうこともないですが、昔は陸軍の施設で訓練する際に、装備や銃は自前の物を持っていくのに、なぜかBDUだけは軍の備品を借りていることがよくありました。いわゆる“訓練時の装備”です。
(3Cを着る訓練時のFBI SWAT ―2014)
(沿岸警備隊との訓練でWLを着るFBI SWAT ―2012)
(UCPを着る訓練時のFBI SWAT ―2010)
(Urban Shieldにて ―2011?)
それにより3CやUCPを着ているSWATの写真が僅かに存在します。理由としては訓練中の一体感の向上等ではないかと思いますが、不思議な光景です。
(SWATにおけるマルチカムの導入も、こうした理由があるのではないかと思います)
ちなみにUCPについては、2010年頃までは一部でそもそも使用していた時期もありました。
もちろん借りてばかりという訳ではなく、FBIは射撃場は数多く持っており、市民アカデミーでは射撃の仕方に関する指導を定期的に行っています。
それによりSWATの射撃の腕と指導力は確かで、陸軍の隊員らにもインストラクターとして射撃指導を行っています。
(射撃指導を行うSWAT ―2016)
2017年にはワシントンのFBI SWATと陸軍MDW MP(憲兵隊)のSRT及びK-9が、クアンティコの海兵隊基地でフィールドトレーニングを行いました。
この訓練は、両部隊間の連携を強固にし、有事の際の対処力を向上させるために行われました。
これまでの訓練と比べると、SWAT側が積極的に指導を行っていたのが特徴的です。
このように一概にSWATばかりが助けられているという訳ではなく、相互に協力し合っているのです。
陸軍以外では海兵隊とも合同訓練を行っているようで、陸軍とは違って特に海兵隊員側が技術を学ぶためにFBIアカデミーへ見学しに来たりしているようです。
FBIは多様性を必要とし、現在は戦場を経験した軍歴がある人材を募集しているようで、FBIとしても勧誘を兼ねてこうした見学会を開いているそうです。
連邦政府機関は、通常は大卒であることが求められますが、FBIでは現役海兵隊員であれば失格にはしないだろうとも言っています。
(元海兵隊のトレーナーいわく)
軍人の転職先としてFBIはもちろん、LEは人気が高いと言いますしね。
このほか軍と何か関係があったかまではわかりませんが、ワシントン支局の部隊は過去にアフガニスタンに派遣されていたりもします。
ついでなので、法執行機関との協力関係についても触れたいと思います。
FBIは国家機関ということもあり、決して多くはありませんが、様々な法執行機関と事件に出動したり、合同訓練を行うこともあります。
《LASD SEB》
戦術医療の技術に長けているSEBは、様々な法執行機関に戦術医療の指導を行っています。
FBI SWAT(もしかするとFBI Medic?)もSEBの指導を受けています。
《DEA Agent》
この画像はFBI SWATと地元警察のSWATしか写っていませんが、加えてDEAとタスクフォースを組んだ事件の様子です。
突入や容疑者確保はSWATたちの役目なので、実際に共同で何かをしている様子が見られないのは残念ですが、DEAと協力することもあります。
《NABU》
ウクライナの国家汚職対策局(NABU)の特殊部隊に技術指導を行いました。
《SOFIC(イベント)》
2016年のSOFICの訓練展示に、Tampa支局のSWATが参加しました。他のMilitary系特殊部隊に混じって、何気に写っています。
ある意味様々な特殊部隊との関係ができたと言えるかもしれません。共演しただけですが……
《地方警察》
もちろん各地の地元警察の特殊部隊とも定期的に訓練をしています。
上画像の訓練には、KCSDやSeattle Fire medicsだけでなく、RCMPも参加しています。
このほかアジア圏の警察特殊部隊とも訓練をしたりと、トレーニング面での顔が広いです。
しかしながら、意外にもSWATとHRTが協力して何かをしている例というのは、実は全くと言っていいほどないです。
アラバマの人質立て籠り事件やNY脱獄事件では、両部隊が出動しましたが、まるでお互いを避けるかのように見向きもしません。
管轄の問題もあるとはいえ、合同訓練さえも行わないので、どことなくFBI特殊間の壁のようなものを感じますね。
とは言ったものの、HRTがとあるトレーニング施設で訓練をした際は、SWATの装備をごっそり借りてきているので、それもまた不思議なところではあります。
いずれにせよ、同じFBIの特殊部隊同士なのに、意外にも訓練をはじめとした協力関係が本当にないのは何故なのでしょうか……
内容的にはFBI SWATもHRT同様に、案外Military系装備の方たちとも合わせができるという話です。
LEとMilitaryが行動を共にしている姿は想像し難いと思いますが、FBI特殊の場合は比較的それが多いのが特徴のひとつです。
特にこうした話は、我々FBI装備側の人たちは知っていても、Military装備側の人たちは知らないことが多いので、この記事をきっかけに異装備間交流が深まれば嬉しいです。
FBIと陸軍は密接な関係にあると言えます。
その関係は非常に古く、特にSWATの上位部隊であるHRTの創設には、陸軍特殊部隊のデルタが関わっているのは有名な話です。
過去にはリビアのベンガジで起きた米領事館襲撃事件の首謀者を捕らえる共同作戦も行っているほか、現用の装備を見ても、HRTがデルタを参考にしているのがよくわかり、その繋がりの強さを感じさせられます。
(ニューヨーク脱獄事件 ―2015)
(デルタを意識したパッチなしの例もある ―2017)
一方でSWATは、HRTのように国外での軍事的共同作戦までは行いませんが、古くは1987年アトランタ刑務所で起きた、移民受刑者の国外追放決定に反発する暴動事件において、SWATもまたデルタと共同鎮圧作戦を行っています。
この事件においては、ルイジアナ州立刑務所でも同様の暴動事件が起きており、HRTがそちら側に対応していたため、
SWATの場合は、最も協力関係にあるのは陸軍州兵や一般部隊です。特に州兵は軍の部隊とはいえ、国内での治安維持活動を行うという役割が似ていることから、訓練を共にする機会が多いです。
LEとMilitaryという根本的な違いから、相互に学べることが多いため、彼らとは定期的に合同訓練を行っており、その様子は2012年以降メディアに上がるようになってきました。
(アラスカの陸軍トレーニング施設にて ―2014)
画像はFBI SWATが2014年に、寒冷地域での本格的な訓練を初めて行ったときの様子です。
あえてMilitaryの世界に当てはめるなら、SWATはポジションとも言えるかもしれませんが、陸軍(州兵)との協力関係が強い理由は、単に立ち位置が似ているからだけでないことを示している内容と言えます。
本来の仕事はやはり捜査であるFBIにとって、SWATチームの仕事は重要とはいえ、FBI全体として見れば優先度は低いです。SWATが出動しなくて済むようにするのが仕事とも言えますからね。
そのためSWAT専用の訓練施設というのが少なく、通常の訓練はもちろん、専門的な内容の訓練を行うにも、各地に訓練施設を持つ陸軍を頼るしかないのです。
(州兵の訓練施設にて ―2017)
(陸軍のUH-60に乗るFBI SWAT ―2012)
また、FBIではハンヴィーをはじめとした、通常軍用に用いられる車輌が数多くあります。
最近ではMRZR4なんかも採用し、HRTがデルタに影響を受けているように、SWATもまた陸軍に大きな影響を受けているのです。
SWATの借り物で面白いものは、最近はそういうこともないですが、昔は陸軍の施設で訓練する際に、装備や銃は自前の物を持っていくのに、なぜかBDUだけは軍の備品を借りていることがよくありました。いわゆる“訓練時の装備”です。
(3Cを着る訓練時のFBI SWAT ―2014)
(沿岸警備隊との訓練でWLを着るFBI SWAT ―2012)
(UCPを着る訓練時のFBI SWAT ―2010)
(Urban Shieldにて ―2011?)
それにより3CやUCPを着ているSWATの写真が僅かに存在します。理由としては訓練中の一体感の向上等ではないかと思いますが、不思議な光景です。
(SWATにおけるマルチカムの導入も、こうした理由があるのではないかと思います)
ちなみにUCPについては、2010年頃までは一部でそもそも使用していた時期もありました。
もちろん借りてばかりという訳ではなく、FBIは射撃場は数多く持っており、市民アカデミーでは射撃の仕方に関する指導を定期的に行っています。
それによりSWATの射撃の腕と指導力は確かで、陸軍の隊員らにもインストラクターとして射撃指導を行っています。
(射撃指導を行うSWAT ―2016)
2017年にはワシントンのFBI SWATと陸軍MDW MP(憲兵隊)のSRT及びK-9が、クアンティコの海兵隊基地でフィールドトレーニングを行いました。
この訓練は、両部隊間の連携を強固にし、有事の際の対処力を向上させるために行われました。
これまでの訓練と比べると、SWAT側が積極的に指導を行っていたのが特徴的です。
このように一概にSWATばかりが助けられているという訳ではなく、相互に協力し合っているのです。
陸軍以外では海兵隊とも合同訓練を行っているようで、陸軍とは違って特に海兵隊員側が技術を学ぶためにFBIアカデミーへ見学しに来たりしているようです。
FBIは多様性を必要とし、現在は戦場を経験した軍歴がある人材を募集しているようで、FBIとしても勧誘を兼ねてこうした見学会を開いているそうです。
連邦政府機関は、通常は大卒であることが求められますが、FBIでは現役海兵隊員であれば失格にはしないだろうとも言っています。
(元海兵隊のトレーナーいわく)
軍人の転職先としてFBIはもちろん、LEは人気が高いと言いますしね。
このほか軍と何か関係があったかまではわかりませんが、ワシントン支局の部隊は過去にアフガニスタンに派遣されていたりもします。
ついでなので、法執行機関との協力関係についても触れたいと思います。
FBIは国家機関ということもあり、決して多くはありませんが、様々な法執行機関と事件に出動したり、合同訓練を行うこともあります。
《LASD SEB》
戦術医療の技術に長けているSEBは、様々な法執行機関に戦術医療の指導を行っています。
FBI SWAT(もしかするとFBI Medic?)もSEBの指導を受けています。
《DEA Agent》
この画像はFBI SWATと地元警察のSWATしか写っていませんが、加えてDEAとタスクフォースを組んだ事件の様子です。
突入や容疑者確保はSWATたちの役目なので、実際に共同で何かをしている様子が見られないのは残念ですが、DEAと協力することもあります。
《NABU》
ウクライナの国家汚職対策局(NABU)の特殊部隊に技術指導を行いました。
《SOFIC(イベント)》
2016年のSOFICの訓練展示に、Tampa支局のSWATが参加しました。他のMilitary系特殊部隊に混じって、何気に写っています。
ある意味様々な特殊部隊との関係ができたと言えるかもしれません。共演しただけですが……
《地方警察》
もちろん各地の地元警察の特殊部隊とも定期的に訓練をしています。
上画像の訓練には、KCSDやSeattle Fire medicsだけでなく、RCMPも参加しています。
このほかアジア圏の警察特殊部隊とも訓練をしたりと、トレーニング面での顔が広いです。
しかしながら、意外にもSWATとHRTが協力して何かをしている例というのは、実は全くと言っていいほどないです。
アラバマの人質立て籠り事件やNY脱獄事件では、両部隊が出動しましたが、まるでお互いを避けるかのように見向きもしません。
管轄の問題もあるとはいえ、合同訓練さえも行わないので、どことなくFBI特殊間の壁のようなものを感じますね。
とは言ったものの、HRTがとあるトレーニング施設で訓練をした際は、SWATの装備をごっそり借りてきているので、それもまた不思議なところではあります。
いずれにせよ、同じFBIの特殊部隊同士なのに、意外にも訓練をはじめとした協力関係が本当にないのは何故なのでしょうか……
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