2016年06月03日
FBI SWAT 装備の変遷
FBI SWATの装備もミリタリー同様に『年代分け』ができるほど時代と共に変化しています。
FBIのSWATは1973年に創設され、そこから考えれば現在との装備に違いがあるのは明白ですが、特に9.11テロから相次ぐテロ事件を受けて装備を常に時代に合わせたものへ変えていくようになりました。
今回は『Ranger Green(RG)を使いはじめてから』の装備を起点にSWAT及びHRTの装備を考察していきたいと思います。
記事はFBI SWATが中心の解説で、SWATやHRTについての詳細はこちらの解説記事をご覧下さい。
年代はおおよそ2年ごとに区切った、以下のような形に分けることができます。
・2009~2010 (2009年以前を含む)
・2011~2012
・2013~2014
・2015~2016
・2017~2019 (現在まで)
この分け方が最も分かりやすいかと思います。
【2009~2010 (第一次更新期)】
2009年には既にCRYE社のコンバットアパレルが採用されていました。現在までの装備のベースとなる部分がここで誕生したわけです。
当時は市販のモデルではなく、FBI Customというカスタム品が使用されていました。
コンバットシャツ特有のトルソーに、現在のGen3のようなエルボーパッドの袖、Gen2型のベルクロが特徴的です。
2009年より前から使用しているとは思いますが、2009年から資料が出はじめているため、わかりやすく考えるため2009年~としています。
しかし、この時点ではコンバットアパレルへの更新は始まったに過ぎず、まだ多くの地域で古いODのBDUが使われていました。
(FBI SWAT)
また、HRTがRGの装備を使用している画像は比較的にこの年代に多いことから『RG装備のHRT』というのは、この頃の装備を指すかと思います。
(FBI HRT、写真の部隊章は旧デザイン)
この時期の装備は、SWATとHRT共にヘルメットがODのMICH2000で、プレートキャリア(以下プレキャリ)がDiamondback Tactical社(以下DBT)のUTOCやCITADEL、Predator2が主流でした。
特に使用されていたプレキャリがUTOCで、他が足早に見かけなくなったのに対して、UTOCは現在まで使われ続けるほど息が長く、Gmanでも使用されていたため、『FBIのプレキャリ』と言える象徴的なアイテムとなりました。
(Universal Tactical Outer Carrier)
他にはSilynx C4OPSをはじめ、各種DBT製ポーチなど、この時期に採用されて現在まで使用され続けているギアは多数あります。
(胸部のTanカラーのPTTスイッチがC4OPS)
こうした点から、この年代の装備が現在の装備スタイルの基礎を作った最初の更新期と言えます。
銃についてもこの頃からColt M4が本格的に行き渡り、SFのM73、RRAのDominator2、EOTechの512等を使用するFBIにおけるスタンダードなカスタムが既に施されていました。
また、この時期の訓練画像でHRTがHK416を使用しているのが見られましたが、それ以降は訓練でも実動でも見ることはなく、結局訓練用の銃なのか何なのかは不明のままとなりました。
いずれにしても、この後の年代の装備の基礎となる要素がこの時期に形成されたのは間違いありません。
《ポイント》
・MICH2000
・UTOC, CITADEL, Predator2
・FBI Custom Combat Shrit
・C4OPS
【2011~2012】
2011年にはほとんどの地域で装備の更新が完了し、2012年でRG装備の原型が完全に出来上がりました。
装備については2009年からの移行が完了した形になるので、先ほど紹介したものが基本となります。
とはいえ2012年までには、また少しずつ変化があり、コンバットアパレルは同じくCRYE製のGen2(AC)が新たに使用されるようにり、プレキャリはUTOC以外をほとんど見かけなくなりました。
この時期のプレキャリはほぼUTOCのみで、CITADEL等が消えていった理由は単純に『古くなった(経年劣化)』と考えるのが妥当でしょう。
また、FBIがDBTとの長期の装備調達契約を結んだため、ここからDBT製品が更に普及していくことになります。
装備更新が極端な地域では、この時点ではまだ異例のMulticam(MC)のGen2アパレルを既に使用している部隊もありました。
この年代のHRTは情報が全くなく、装備更新の空白期間でしたが、SWATでMC装備を使いはじめた部隊が既にいたことから、HRTもこの2年間で確実にMC装備への移行を完了していたものと思われます。
他に大きな特徴と言えるのは『FBI SWATパッチ』の導入です。
HRTには特徴的なSevare Vitasのパッチがありましたが、FBI SWATにはこれまで全部隊で統一されたパッチがなかったせいか、SWATのためのパッチが2012年に登場します。(この年に使用画像が集中し、それ以前には使用例が確認できなかったことから、2012年に導入されたと考えられます)
大きな鷲の顔とたなびく国旗が描かれたこの円形の刺繍パッチは現在でも使用され続けており、2012年以降の画像のほとんどで確認できるようになりました。
《ポイント》
・MICH2000
・UTOC
・Gen2 (AC) Combat Apparel
・FBI SWAT Patch
【2013~2014 (第二次更新期)】
これまでの年代のSWATとHRTの装備は、年代相応のものと言えました。しかし、それらの装備が使われはじめたのが2009年頃からということを考えると、もう4年も使われていることになります。
時代の流れからもMICHやUTOCのように、大型で重いギアは時代遅れになりつつありました。
そして、この時期に新たに採用されはじめたプレキャリがAW-FAPCR(以下FAPCR)です。
UTOCと同じくDBTの製品ですが、現在主流となっている様々なプレキャリ同様のコンパクトさを持ち、加えてカマーバンドを取り外しても使える利便性を兼ね備えた、当時最新のプレキャリでした。
FAPCRの普及はかなり急速で、UTOCも使われ続けてはいましたが、その姿がほとんど見られなくなるほどにSWATに浸透していきます。
UTOCを『FBIのプレキャリ』と呼んだのに対し、このFAPCRは基本的にSWATが使用していたことから『FBI SWATのプレキャリ』と呼べると思います。
(もちろんその後はGmanでも多用されました)
また、もう1つの大きな変化として、ヘルメットがMICH2000からops-coreのSentryに変わりました。
MICH2000のように耳まで覆う形状とサイドレールが特徴的で、ops-coreの製品としては珍しく他所でほとんど使用例がないため、FBIでの使用が目立っているヘルメットです。
(FAPCRとSentryの組み合わせ)
FAPCRとSentryの組み合わせにより、昔ながらのいかにもなSWATから、近代的な特殊部隊感のある外見に様変わりしました。
そして2014年には完全にこの形が定着し、現在の装備へと繋がっていきます。
14年の一年間は装備が唯一安定していた時期でもあります。また、Gen3アパレルの使用例も出てきたりと画像資料も増えたために、多彩な装備が見られるようになった時期でした。
もちろんUTOCやMICHが完全に消えたわけではなく、現在でも使用している隊員が稀にいます。
とはいえこの年からの更新は非常に早く、2015年に近づくにつれ、使用例が徐々に減ったのは間違いありません。
一方HRTは、2013年4月のボストンマラソン爆弾テロ事件時に2年の沈黙を経て出動しました。
このとき既に現在のHRTのようなマルチカムの装備を使用していたことから、空白期間の前年代の間に装備を更新していたことがわかります。
この時点でHRTは完全にマルチカム化しており、それ以降RGの装備を使用している姿は見られなくなりました。
CRYEのMCアパレルだけでなく、プレキャリやヘルメットも同社のJPCとAirFrameで、SWATと違いCRYE製品だらけです。
HRTにもRG装備の時代はありましたが、そもそも装備の調達に関してもSWATとHRTは完全に別であるため、このようにSWATと全く違う装備となっているのです。
なので、SWATとHRTが使用する装備が同じであったとしても偶然の一致や訓練での借り物にすぎないということです。
SWATでも早いところは2012年にマルチカム化していましたが、この年ではワシントン海軍工廠銃撃事件でヘルメットがSentryなぐらいで、他はマルチカムのコンバットアパレルにRGのJPCなど、HRTそっくりな装備のSWATが目立ちました。
このSWATはHRTも所属するワシントン支局の部隊で、Washington DivisionはSWATの中でも最精鋭なため、SWATではありますが装備の更新がこれまた非常に早いため、本記事の年代分けに当てはまらない唯一のSWATチームです。
同部隊については銃も次年代のカスタムを先に施していたりと、装備面で常に他の支局よりリードしています。
《ポイント》
・Sentry Helmet
・AW-FAPCR
・Gen2 & Gen3 Combat Apparel
【2015~2016 (第三次更新期)】
2015からSWATはまた新たな装備の更新をはじめます。急速な装備の調達は、ボストンでのテロが大きく影響していることは間違いないでしょう。
ここからの装備の更新は、2016年で一旦区切ることはできますが、更新の流れ自体は今現在まで止むことなく続いています。
そして、特にこれまでと装備が大きく変わる、重大な転換期であるとも言えます。
最初にUTOCから取って代わったAW-FAPCRが今度は代替わりする番となります。
FAPCRの正統な後継である、同じくDBT製のDTACが使われ始めました。
(TPS Technologyに基づく新設計)
DTACはFBI SWATの要望を受けて開発され、2013年にはリリースされていましたが、当時はFAPCR採用から間もなかったため、2015年に入り満を持しての普及となりました。
(2015年 Chicago Division)
(2013年 Tampa Division)
タンパなどの一部の支局では、リリース時から使用されていました。タンパの装備更新もワシントン同様に早いため、例外と考えてもいいかもしれません。
ちなみにUTOCの後継型で、DTACと同時リリースされたMTACは何故か採用されませんでした。
(MTAC)
いずれにしてもDTACの登場により、FAPCRもかつてのUTOCのように徐々にその座を奪われつつありました。
更にDTACに加えてもう1つ、新たに採用されたプレキャリがあります。
これまでDBTとの長い製品調達契約を続け、DTACも採用したFBIですが、ここで何と新たにPALACTETE(以下パラク)製のSOHPC Gen3が加わります。
(SOHPC Gen3)
SOHPCはパラクを代表するプレキャリですが、パラクと言えばRGでなくSG(スモークグリーン)の印象がとても強いかと思われます。実際それまでRGはラインナップにありませんでしたが、Gen3からRGが加わったのです。
現在このSOHPC Gen3もDTACと同時に使用されています。
初登場は2016年1月のオレゴン州武装市民立て籠り事件で、最初はGmanが使用しているのが目立っていましたが、後にSWATも着用しているのが確認されはじめました。
(Oregon Standoff)
(左:DTAC 右:SOHPC)
この時点ではDTACと比べるとまだまだな普及率で、2017年になるまで使用例がほとんどありませんでした。
SOHPC調達の背景には、2014年にFBIが新たなアーマー調達計画としてTSSi及びPoint Blank(パラクを傘下に持つ親会社)と3000万ドルに及ぶ1年間の装備調達契約を結んだことに始まりました。
TSSiの取り扱い品の中にPBE製品が含まれていたため、この2社との同時契約の運びとなり、FBIでは7種類のアーマーキットを調達することにしたようです。
7種といってもあくまで『キット』の話で、PBE製品は迷彩違いのSOHPC二種とソフトーアーマキャリアの計三種類を現在までに調達していますが、これらに付属するポーチ等の違う7種ということかと思います。
そして契約締結が2014年、調達開始が2015年からだったということで、この年から使用例が出てきた訳です。なので、現在は契約も切れ、調達も全て終わってます。
さて、話は戻りこの年代で最も大きな事件といえば、2015年6月のNY脱獄事件が記憶に新しいです。
マルチカムのSWATが大々的に登場した二度目の事件で、TRU-SPECのコンバットアパレルを使用していたのが印象深いかと思います。
この事件では(既にマルチカム装備を使用していた)HRTも出動していたので、FBIはマルチカムだらけで同じように見えてしまうかもしれませんが、SWATは多くがキャップを被り、FAPCRを使用していたので見分けがつくと思います。
(上:HRT 下:SWAT)
HRTについてはCRYE製JPC 2.0等を新たに使用しており、HRTもSWAT同様に装備を更新していたことがわかります。
そのほかラスベガスの市民アカデミーやバスターミナル銃撃事件においてもマルチカムのSWATが登場し、マルチカムにDTAC/SOHPC(Gen3)という組み合わせが見られるようになりました。
2017年の本格的なマルチカム化の流れが徐々に広がりはじめますが、それでもこの年代はやはりRGがまだまだ現役です。
(2016年末 UCLA Shooting)
2016年終わり頃に起きたUCLA銃撃事件に出動したロサンゼルスの部隊は、RGの装備を使用していました。同部隊も2017年にはMC化していますが、それでもこの時点ではRG装備オンリーです。
ここではMCのベルトやダンプポーチが特徴的な差し色になっていますが、このほかヘルメットカバーのみMCであったりと、一部だけMCに更新されたスタイルも2016年にはしばし見られました。
2015年からの更新はプレキャリだけに留まらず、PTTにも変更が見え始めます。
Silynx C4OPSは如何せん09年から使われているものですから、更新されるのは自然なことで、後釜に選ばれたのはAtlantic SignalのWarrior DUALです。
(特徴的な兵士の刻印)
C4OPSの後釜とあって、シングルではなくデュアルタイプが採用されているようです。
さすがに通信機器ということもあり、こちらの更新は一瞬でした。
C4OPSも2015年のはじめのうちは一部でギリギリ使用していましたが、今ではイベント時に子供に触らせるオモチャとなっています。
2016年にはRG/MCの装備に関わらず、ほぼ全ての部隊で使われるようになり、現用装備のSWATを象徴するアイテムの1つとなりました。
また、象徴と言えば、まさしく『SWATであることを象徴するアイテム』であるFBI SWATパッチにも更新がありました。
これまで円形でシンプルなデザインだったのが、大きな盾型の複雑なデザインを持つパッチに変わったのです。
2015年に突然現れ、当初は所属部隊(支局)のパッチかと思っていましたが、それ以降も使用例は各地でどんどん増えたことから、それが新しい部隊章であったことがわかりました。
今や2015年~現在までの装備では重要なポイントとなっています。
旧丸型もまだまだ現役で、新盾型と併用している例も確認しています。
変化があったのは装備だけではありません。M4についても、カスタムに変化が見られます。
これまで通りのカスタムM4も使用されていますが、新たにTROYのAlpha Railを使用したカスタムが見られるようになってきました。
(TROY Alpha Rail 9)
せっかくAlpha Railのような細長いフリーフロートのハンドガードを使用しているのに、これまでのカスタムの影響かグリップポッド等のゴツいグリップを併用する隊員が多いです。
このほかMagpul等の各種グリップやストックの使用例や、オプティクスもDomi2にEotechの組み合わせからAimpointのT-2へと変わり、M4のカスタムも近代的になりました。
このように、これまでの装備のほぼ全てが更新されて、大きく姿を変えたのがこの年代です。
《ポイント》
・DTAC, SOHPC Gen3
・Warrior DUAL
・FBI SWAT Patch (2015 Ver.)
・Alpha Rail
【2017~2019 (第四次更新期)】
2017年の新年早々に出動した部隊が、マルチカムのコンバットアパレルを使用していました。
それを見た当初、これからはマルチカムの時代になると確信しましたが、これを皮切りにマルチカム化が各地の部隊で広がっていったのが2017年です。
前年代で更新した基本的な装備は据え置きで、コンバットアパレルがマルチカムのGen2またはGen3へと変わり、そこに同迷彩のFS製ヘルメットカバーが加わるような形でマルチカム化が進み、銃も新カスタムと呼んでいたものが今やスタンダードとなりました。
(更新の早い地域では2016年にはMC化済み)
(2016年末はRGだったLAも半年で完全にMCに)
そしてDTACやSOHPC、Warrior DUALも定番アイテムとなり、SOHPCの普及率もDTACに追い付いています。
特にDBTが経営難から2016年末には閉業、2017年にはHP等も含め完全になくなってしまい、それもあってSOHPCが普及します。もちろんDTACも閉業前に納品済みなので使用例は同じように多いです。
迷彩こそ変わりましたが、そこの変化が大きいぐらいで、後は前年代の装備が完全に定着したという点では、ある意味で装備が再び安定した年とも言えるかもしれません。
とはいえ使用例が増えてきたものや、新たに加わった装備ももちろん数多くあります。
プレキャリで言うならば、いくつかの地域では今更ながらJPCが普及しています。
(もちろん色はMC)
(Milwaukee Division)
このJPCの普及率についてもそうなのですが、特に最近の頻発するテロを受け、SWATにも各支局で相当な予算が振り分けられているようです。
装備だけでなく訓練やイベント面でもこれまで以上に充実したものが行われています。
そうした背景があるのか、これまでと違い、2017年から各部隊での装備差が非常に目立ち、全部隊として見ると装備の統一性がなくなってきています。
執筆中
FBIのSWATは1973年に創設され、そこから考えれば現在との装備に違いがあるのは明白ですが、特に9.11テロから相次ぐテロ事件を受けて装備を常に時代に合わせたものへ変えていくようになりました。
今回は『Ranger Green(RG)を使いはじめてから』の装備を起点にSWAT及びHRTの装備を考察していきたいと思います。
記事はFBI SWATが中心の解説で、SWATやHRTについての詳細はこちらの解説記事をご覧下さい。
年代はおおよそ2年ごとに区切った、以下のような形に分けることができます。
・2009~2010 (2009年以前を含む)
・2011~2012
・2013~2014
・2015~2016
・2017~2019 (現在まで)
この分け方が最も分かりやすいかと思います。
【2009~2010 (第一次更新期)】
2009年には既にCRYE社のコンバットアパレルが採用されていました。現在までの装備のベースとなる部分がここで誕生したわけです。
当時は市販のモデルではなく、FBI Customというカスタム品が使用されていました。
コンバットシャツ特有のトルソーに、現在のGen3のようなエルボーパッドの袖、Gen2型のベルクロが特徴的です。
2009年より前から使用しているとは思いますが、2009年から資料が出はじめているため、わかりやすく考えるため2009年~としています。
しかし、この時点ではコンバットアパレルへの更新は始まったに過ぎず、まだ多くの地域で古いODのBDUが使われていました。
(FBI SWAT)
また、HRTがRGの装備を使用している画像は比較的にこの年代に多いことから『RG装備のHRT』というのは、この頃の装備を指すかと思います。
(FBI HRT、写真の部隊章は旧デザイン)
この時期の装備は、SWATとHRT共にヘルメットがODのMICH2000で、プレートキャリア(以下プレキャリ)がDiamondback Tactical社(以下DBT)のUTOCやCITADEL、Predator2が主流でした。
特に使用されていたプレキャリがUTOCで、他が足早に見かけなくなったのに対して、UTOCは現在まで使われ続けるほど息が長く、Gmanでも使用されていたため、『FBIのプレキャリ』と言える象徴的なアイテムとなりました。
(Universal Tactical Outer Carrier)
他にはSilynx C4OPSをはじめ、各種DBT製ポーチなど、この時期に採用されて現在まで使用され続けているギアは多数あります。
(胸部のTanカラーのPTTスイッチがC4OPS)
こうした点から、この年代の装備が現在の装備スタイルの基礎を作った最初の更新期と言えます。
銃についてもこの頃からColt M4が本格的に行き渡り、SFのM73、RRAのDominator2、EOTechの512等を使用するFBIにおけるスタンダードなカスタムが既に施されていました。
また、この時期の訓練画像でHRTがHK416を使用しているのが見られましたが、それ以降は訓練でも実動でも見ることはなく、結局訓練用の銃なのか何なのかは不明のままとなりました。
いずれにしても、この後の年代の装備の基礎となる要素がこの時期に形成されたのは間違いありません。
《ポイント》
・MICH2000
・UTOC, CITADEL, Predator2
・FBI Custom Combat Shrit
・C4OPS
【2011~2012】
2011年にはほとんどの地域で装備の更新が完了し、2012年でRG装備の原型が完全に出来上がりました。
装備については2009年からの移行が完了した形になるので、先ほど紹介したものが基本となります。
とはいえ2012年までには、また少しずつ変化があり、コンバットアパレルは同じくCRYE製のGen2(AC)が新たに使用されるようにり、プレキャリはUTOC以外をほとんど見かけなくなりました。
この時期のプレキャリはほぼUTOCのみで、CITADEL等が消えていった理由は単純に『古くなった(経年劣化)』と考えるのが妥当でしょう。
また、FBIがDBTとの長期の装備調達契約を結んだため、ここからDBT製品が更に普及していくことになります。
装備更新が極端な地域では、この時点ではまだ異例のMulticam(MC)のGen2アパレルを既に使用している部隊もありました。
この年代のHRTは情報が全くなく、装備更新の空白期間でしたが、SWATでMC装備を使いはじめた部隊が既にいたことから、HRTもこの2年間で確実にMC装備への移行を完了していたものと思われます。
他に大きな特徴と言えるのは『FBI SWATパッチ』の導入です。
HRTには特徴的なSevare Vitasのパッチがありましたが、FBI SWATにはこれまで全部隊で統一されたパッチがなかったせいか、SWATのためのパッチが2012年に登場します。(この年に使用画像が集中し、それ以前には使用例が確認できなかったことから、2012年に導入されたと考えられます)
大きな鷲の顔とたなびく国旗が描かれたこの円形の刺繍パッチは現在でも使用され続けており、2012年以降の画像のほとんどで確認できるようになりました。
《ポイント》
・MICH2000
・UTOC
・Gen2 (AC) Combat Apparel
・FBI SWAT Patch
【2013~2014 (第二次更新期)】
これまでの年代のSWATとHRTの装備は、年代相応のものと言えました。しかし、それらの装備が使われはじめたのが2009年頃からということを考えると、もう4年も使われていることになります。
時代の流れからもMICHやUTOCのように、大型で重いギアは時代遅れになりつつありました。
そして、この時期に新たに採用されはじめたプレキャリがAW-FAPCR(以下FAPCR)です。
UTOCと同じくDBTの製品ですが、現在主流となっている様々なプレキャリ同様のコンパクトさを持ち、加えてカマーバンドを取り外しても使える利便性を兼ね備えた、当時最新のプレキャリでした。
FAPCRの普及はかなり急速で、UTOCも使われ続けてはいましたが、その姿がほとんど見られなくなるほどにSWATに浸透していきます。
UTOCを『FBIのプレキャリ』と呼んだのに対し、このFAPCRは基本的にSWATが使用していたことから『FBI SWATのプレキャリ』と呼べると思います。
(もちろんその後はGmanでも多用されました)
また、もう1つの大きな変化として、ヘルメットがMICH2000からops-coreのSentryに変わりました。
MICH2000のように耳まで覆う形状とサイドレールが特徴的で、ops-coreの製品としては珍しく他所でほとんど使用例がないため、FBIでの使用が目立っているヘルメットです。
(FAPCRとSentryの組み合わせ)
FAPCRとSentryの組み合わせにより、昔ながらのいかにもなSWATから、近代的な特殊部隊感のある外見に様変わりしました。
そして2014年には完全にこの形が定着し、現在の装備へと繋がっていきます。
14年の一年間は装備が唯一安定していた時期でもあります。また、Gen3アパレルの使用例も出てきたりと画像資料も増えたために、多彩な装備が見られるようになった時期でした。
もちろんUTOCやMICHが完全に消えたわけではなく、現在でも使用している隊員が稀にいます。
とはいえこの年からの更新は非常に早く、2015年に近づくにつれ、使用例が徐々に減ったのは間違いありません。
一方HRTは、2013年4月のボストンマラソン爆弾テロ事件時に2年の沈黙を経て出動しました。
このとき既に現在のHRTのようなマルチカムの装備を使用していたことから、空白期間の前年代の間に装備を更新していたことがわかります。
この時点でHRTは完全にマルチカム化しており、それ以降RGの装備を使用している姿は見られなくなりました。
CRYEのMCアパレルだけでなく、プレキャリやヘルメットも同社のJPCとAirFrameで、SWATと違いCRYE製品だらけです。
HRTにもRG装備の時代はありましたが、そもそも装備の調達に関してもSWATとHRTは完全に別であるため、このようにSWATと全く違う装備となっているのです。
なので、SWATとHRTが使用する装備が同じであったとしても偶然の一致や訓練での借り物にすぎないということです。
SWATでも早いところは2012年にマルチカム化していましたが、この年ではワシントン海軍工廠銃撃事件でヘルメットがSentryなぐらいで、他はマルチカムのコンバットアパレルにRGのJPCなど、HRTそっくりな装備のSWATが目立ちました。
このSWATはHRTも所属するワシントン支局の部隊で、Washington DivisionはSWATの中でも最精鋭なため、SWATではありますが装備の更新がこれまた非常に早いため、本記事の年代分けに当てはまらない唯一のSWATチームです。
同部隊については銃も次年代のカスタムを先に施していたりと、装備面で常に他の支局よりリードしています。
《ポイント》
・Sentry Helmet
・AW-FAPCR
・Gen2 & Gen3 Combat Apparel
【2015~2016 (第三次更新期)】
2015からSWATはまた新たな装備の更新をはじめます。急速な装備の調達は、ボストンでのテロが大きく影響していることは間違いないでしょう。
ここからの装備の更新は、2016年で一旦区切ることはできますが、更新の流れ自体は今現在まで止むことなく続いています。
そして、特にこれまでと装備が大きく変わる、重大な転換期であるとも言えます。
最初にUTOCから取って代わったAW-FAPCRが今度は代替わりする番となります。
FAPCRの正統な後継である、同じくDBT製のDTACが使われ始めました。
(TPS Technologyに基づく新設計)
DTACはFBI SWATの要望を受けて開発され、2013年にはリリースされていましたが、当時はFAPCR採用から間もなかったため、2015年に入り満を持しての普及となりました。
(2015年 Chicago Division)
(2013年 Tampa Division)
タンパなどの一部の支局では、リリース時から使用されていました。タンパの装備更新もワシントン同様に早いため、例外と考えてもいいかもしれません。
ちなみにUTOCの後継型で、DTACと同時リリースされたMTACは何故か採用されませんでした。
(MTAC)
いずれにしてもDTACの登場により、FAPCRもかつてのUTOCのように徐々にその座を奪われつつありました。
更にDTACに加えてもう1つ、新たに採用されたプレキャリがあります。
これまでDBTとの長い製品調達契約を続け、DTACも採用したFBIですが、ここで何と新たにPALACTETE(以下パラク)製のSOHPC Gen3が加わります。
(SOHPC Gen3)
SOHPCはパラクを代表するプレキャリですが、パラクと言えばRGでなくSG(スモークグリーン)の印象がとても強いかと思われます。実際それまでRGはラインナップにありませんでしたが、Gen3からRGが加わったのです。
現在このSOHPC Gen3もDTACと同時に使用されています。
初登場は2016年1月のオレゴン州武装市民立て籠り事件で、最初はGmanが使用しているのが目立っていましたが、後にSWATも着用しているのが確認されはじめました。
(Oregon Standoff)
(左:DTAC 右:SOHPC)
この時点ではDTACと比べるとまだまだな普及率で、2017年になるまで使用例がほとんどありませんでした。
SOHPC調達の背景には、2014年にFBIが新たなアーマー調達計画としてTSSi及びPoint Blank(パラクを傘下に持つ親会社)と3000万ドルに及ぶ1年間の装備調達契約を結んだことに始まりました。
TSSiの取り扱い品の中にPBE製品が含まれていたため、この2社との同時契約の運びとなり、FBIでは7種類のアーマーキットを調達することにしたようです。
7種といってもあくまで『キット』の話で、PBE製品は迷彩違いのSOHPC二種とソフトーアーマキャリアの計三種類を現在までに調達していますが、これらに付属するポーチ等の違う7種ということかと思います。
そして契約締結が2014年、調達開始が2015年からだったということで、この年から使用例が出てきた訳です。なので、現在は契約も切れ、調達も全て終わってます。
さて、話は戻りこの年代で最も大きな事件といえば、2015年6月のNY脱獄事件が記憶に新しいです。
マルチカムのSWATが大々的に登場した二度目の事件で、TRU-SPECのコンバットアパレルを使用していたのが印象深いかと思います。
この事件では(既にマルチカム装備を使用していた)HRTも出動していたので、FBIはマルチカムだらけで同じように見えてしまうかもしれませんが、SWATは多くがキャップを被り、FAPCRを使用していたので見分けがつくと思います。
(上:HRT 下:SWAT)
HRTについてはCRYE製JPC 2.0等を新たに使用しており、HRTもSWAT同様に装備を更新していたことがわかります。
そのほかラスベガスの市民アカデミーやバスターミナル銃撃事件においてもマルチカムのSWATが登場し、マルチカムにDTAC/SOHPC(Gen3)という組み合わせが見られるようになりました。
2017年の本格的なマルチカム化の流れが徐々に広がりはじめますが、それでもこの年代はやはりRGがまだまだ現役です。
(2016年末 UCLA Shooting)
2016年終わり頃に起きたUCLA銃撃事件に出動したロサンゼルスの部隊は、RGの装備を使用していました。同部隊も2017年にはMC化していますが、それでもこの時点ではRG装備オンリーです。
ここではMCのベルトやダンプポーチが特徴的な差し色になっていますが、このほかヘルメットカバーのみMCであったりと、一部だけMCに更新されたスタイルも2016年にはしばし見られました。
2015年からの更新はプレキャリだけに留まらず、PTTにも変更が見え始めます。
Silynx C4OPSは如何せん09年から使われているものですから、更新されるのは自然なことで、後釜に選ばれたのはAtlantic SignalのWarrior DUALです。
(特徴的な兵士の刻印)
C4OPSの後釜とあって、シングルではなくデュアルタイプが採用されているようです。
さすがに通信機器ということもあり、こちらの更新は一瞬でした。
C4OPSも2015年のはじめのうちは一部でギリギリ使用していましたが、今ではイベント時に子供に触らせるオモチャとなっています。
2016年にはRG/MCの装備に関わらず、ほぼ全ての部隊で使われるようになり、現用装備のSWATを象徴するアイテムの1つとなりました。
また、象徴と言えば、まさしく『SWATであることを象徴するアイテム』であるFBI SWATパッチにも更新がありました。
これまで円形でシンプルなデザインだったのが、大きな盾型の複雑なデザインを持つパッチに変わったのです。
2015年に突然現れ、当初は所属部隊(支局)のパッチかと思っていましたが、それ以降も使用例は各地でどんどん増えたことから、それが新しい部隊章であったことがわかりました。
今や2015年~現在までの装備では重要なポイントとなっています。
旧丸型もまだまだ現役で、新盾型と併用している例も確認しています。
変化があったのは装備だけではありません。M4についても、カスタムに変化が見られます。
これまで通りのカスタムM4も使用されていますが、新たにTROYのAlpha Railを使用したカスタムが見られるようになってきました。
(TROY Alpha Rail 9)
せっかくAlpha Railのような細長いフリーフロートのハンドガードを使用しているのに、これまでのカスタムの影響かグリップポッド等のゴツいグリップを併用する隊員が多いです。
このほかMagpul等の各種グリップやストックの使用例や、オプティクスもDomi2にEotechの組み合わせからAimpointのT-2へと変わり、M4のカスタムも近代的になりました。
このように、これまでの装備のほぼ全てが更新されて、大きく姿を変えたのがこの年代です。
《ポイント》
・DTAC, SOHPC Gen3
・Warrior DUAL
・FBI SWAT Patch (2015 Ver.)
・Alpha Rail
【2017~2019 (第四次更新期)】
2017年の新年早々に出動した部隊が、マルチカムのコンバットアパレルを使用していました。
それを見た当初、これからはマルチカムの時代になると確信しましたが、これを皮切りにマルチカム化が各地の部隊で広がっていったのが2017年です。
前年代で更新した基本的な装備は据え置きで、コンバットアパレルがマルチカムのGen2またはGen3へと変わり、そこに同迷彩のFS製ヘルメットカバーが加わるような形でマルチカム化が進み、銃も新カスタムと呼んでいたものが今やスタンダードとなりました。
(更新の早い地域では2016年にはMC化済み)
(2016年末はRGだったLAも半年で完全にMCに)
そしてDTACやSOHPC、Warrior DUALも定番アイテムとなり、SOHPCの普及率もDTACに追い付いています。
特にDBTが経営難から2016年末には閉業、2017年にはHP等も含め完全になくなってしまい、それもあってSOHPCが普及します。もちろんDTACも閉業前に納品済みなので使用例は同じように多いです。
迷彩こそ変わりましたが、そこの変化が大きいぐらいで、後は前年代の装備が完全に定着したという点では、ある意味で装備が再び安定した年とも言えるかもしれません。
とはいえ使用例が増えてきたものや、新たに加わった装備ももちろん数多くあります。
プレキャリで言うならば、いくつかの地域では今更ながらJPCが普及しています。
(もちろん色はMC)
(Milwaukee Division)
このJPCの普及率についてもそうなのですが、特に最近の頻発するテロを受け、SWATにも各支局で相当な予算が振り分けられているようです。
装備だけでなく訓練やイベント面でもこれまで以上に充実したものが行われています。
そうした背景があるのか、これまでと違い、2017年から各部隊での装備差が非常に目立ち、全部隊として見ると装備の統一性がなくなってきています。
執筆中
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コメントありがとうございます!
私服にプレキャリのスタイルのSWATは結局休日等に急に呼び出されたような人たちなので、それこそテロみたいなことでない限りまず見られるものではありません。
しかし、最近でもエージェントの任務に一応一人だけついてきたぐらいの人だと、そういうスタイルの人はいますよ!(一人だけのうえに、そこまで危険性はないので、わざわざフル装備を着てこなかったという感じ)
Gmanでのプレキャリ使用例は引き続きありますよ!
彼らも撃たれたくはないので、危険度のある仕事では2021年現在も着用のうえ出動しています。